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11・11への想い②

全4回で綴るので、まだお読みでない方は、前回からお読みいただけると幸いです。

2回目の開催となった2017年度のグルーデコアワードは、テーマを決めて行われた。テーマは「愛」である。「愛」についてレポートを提出するように言われても原稿用紙に書くことさえ難しいのに、それを作品にして応募するのは、なかなかハードルが高かった。それでも応募総数は154点あったそうで、まずは写真での審査があった。コシノジュンコ先生がすべての作品の写真をご覧になり、実物を見たいと思う作品が14点選ばれた。その14点を対象にした最終審議が行われ、審査発表は対象者へのメールでの発表となる。

愛を作品にしなければならない。まず「愛」とはなんだろう。愛自体は目に見えないものである。人によって様々だけれど、真っ先に思い浮かぶのは恋愛としての愛である人も多いかもしれない。他には親子愛、夫婦愛、家族愛、ペットへの愛。皆それぞれ愛を学ぶレッスンが、至る所で繰り広げられている。色のイメージとしてはピンクや赤が多く思い浮かぶのではないだろうか。愛の表現としては、大体が「プラス」の感情を抱きやすい。実際他の7点の入賞作品はどれもプラスの感情の「愛」であった。

私が想像する愛は、違った。

『Heart(慈しみと憎しみと)』

「愛とは。慈しむ心や愛する気持ちと、憎しみ・嫉妬・執着、その両面を持ち合わせる。 人は誰しも愛により生を受け、愛憎と共に歩む運命。愛は人間の感情の根幹をなすものであり、人は愛に生き、愛に逝くのだ…」

作品中心部分は愛の象徴である心臓(Heart)をモチーフにアシンメトリーに表現し、周囲はやわらかな柔毛のイメージで制作した。実寸は、心臓の片割れ部分が握りこぶし大である。  

人間として生まれた以上、マイナスの感情を持ったことのない者はいない。この、おそらく地球でしか味わえない、プラスとマイナスの感情。なぜなら宇宙の本質は愛であることを考えると、今、この瞬間でしか味わえない貴重な感情という財産なのである。なので大切にしたいと思った。

表現自体は私が考える人生のテーマ「光と影」で表し、愛の感情を最も感じやすい心臓をモチーフとした。好きな人と、お別れが来るときには、胸が苦しくなるものだ。涙が出る際の、ハートから湧き上がってくる感覚を思い出して欲しい。逆に、好きな人と会える時は、ハートがドキドキする。私たちは愛をハートで感じている。

経験値が上がったからか、嫉妬や憎しみは随分と減った。どんな感情か忘れようとしている。個人的には執着を愛を勘違いしがちで、ピンポイントの愛というのは非常に重たい波動だから捨て去りたいと思っていた。この4月に、ようやくそれもうまく手放せたと思っている。私は子育てしているうちに、執着のことを愛だと勘違いしてしまったようだ。執着とは非常に自分自身を苦しめるものである。恋愛などで苦しい思いをしている人は、間違いなく執着が苦しみを呼んでいる。そんな執着は気付いた時点で、手放してみてはどうだろう。手放した途端、軽やかになり、本来のニュートラルな自分を体験する。

よく言われるのが、「冨田さんの作品で1番好きなのは、ハートの作品です」。実際反響も大きかった。それほど、愛のマイナス面で苦しんでいる人が多いことを知った。

愛とは、正負の感情を包括した、とてもとても大きい、宇宙のようなものである。私は、地球で生まれた人間として、今しか味わえない愛のレッスンを、作品として残すことにした。

今までの作品の中で、一番短時間でシンプルに制作できたのは、このハートである。それほど、地球でいう愛の本質は、とてもシンプルなものなのだ。

前年度、頂上を逃した景色を知っている。頂上から2番目の景色だ。富士山から見た景色は想像できるだろう。とても美しい。日本で2番目の山から見る景色は、想像できる人が少ないはずである。2番目の山から見る景色は、他の高さの山から見る景色と、さほど変わらないものである。少しの高さしか変わらないのであれば、富士山からの景色を見たかった。人々に記憶されるのは、「一番高い山」だけである。悔しさをバネに、来年度は絶対グランプリを取ろう・・・とは思ったものの、実際作ると意外と力まずにあっさりと作れたため、おそらく執着自体が外れてしまったのだと思う。結果発表の日は、友人とゴルフに出かけていて、発表のことをすっかり忘れていたのだ。自分でPCを開いて、メールチェックしてから「そういえば今日だった」と知る。一緒にゴルフに行っていた、いつも応援してくれる友達にすぐ電話し、泣きながらありがとうを言ったことが記憶に新しい。

人生で一番重要な「愛」というものを作品化し、それがグランプリを受賞できたことは、私の人生史の中で最も嬉しいことである。明日は宇宙への旅にご案内します。

Yumi


6 Nov , Wed , 2019