11・11への想い
来週月曜日、11月11日。東京南青山のコシノジュンコブティックで行われる「グルーデコアワード2019 最終審査」。今年のアワードをもって挑戦は最後にすると決めていたので、ファイナリスト6名にまで残れた事だけでも奇跡。今日から4日間に渡り、私が熱狂できたグルーデコアワードの軌跡を残しておきたいと思います。どうぞお付き合いください。
“2016’ Japan Gluedeco Association AWARD”が、認定講師の技術力向上と、作品を発表する場を設ける事を目的として初めて開催されました。応募総数は全国から500点以上だったそうです。講師としてもまだ数年しかキャリアがなく、ハンドワーク自体に若干苦手意識があるため、すべてに自信を持って教えられていたかというと、そうではない時期でした。なぜこの業界に飛び込んだのかという質問に対しては、私の探していた「人に何かを教える事」と「ときめく事」が合致したのが、まさにグルーデコだったからです。キラキラしたものが好きだったので(それは私の星好きからきている)、スワロフスキー®️・クリスタルを使って、好きなアクセサリーを自由に作れるなんて、これしかない!と思いました。30代のうちに起業するということは、20代から書いていた「キラキラリスト」の中の1個の目標でしたし、迷うことなく飛び込んだのです。
もともと、苦手な分野に関しては、人の100倍努力すれば、その分野のスタート地点に立てると思っているので、講師の資格を取ってから半年間は家で黙々と練習して、人前には出ませんでした。教えることを始めたのも、半年後です。案の定、講師業を始めてからも、世の中には優れた方がたくさんいらして、私より、習いに来られた方の方が上手なんてことは、何度あったかわからない。その度に、自分の立ち位置を確認してきました。私にはこの仕事が向いてるのか正直やってみたもののわからない。私でしかできない事って何なんだろう?私と同じ立場の人がたくさんいる・・・
その頃、開催される事が決まったのが、グルーデコアワードだったのです。特別審査員がコシノジュンコ先生ということもあり、自分を試す良い機会だと思い、応募しました。コンテストにも応募したことのない私。悩んだ末、ウェディングブーケを作る事にしました。好きな花なんです。カサブランカ。その頃、物事すべてがスッキリしなかった私にとっては、何かが変わる気がして、とりあえず応募する事にした。
2016年度の入賞者は7名。私は最優秀賞を逃し、クリエイティブ部門優秀賞を受賞しました。本をご購入くださった方はお読みいただいたかと思いますが、結構なダメージで、2週間ほど無気力感というか、頂上には登れなかったんだという悲しい気持ちのやり場がなく・・・しばらく落ちました。私、人に対してというのではなく、自分に対してものすごい負けず嫌いなんですよ。自分の努力が足りなかったことは、とても辛い。
作品の名前は「eternity」。最優秀賞は逃しましたが、このブーケのストーリーは続きます。私の大切な友人が、結婚式で実際にウェディングブーケとして持ってくれたんです。これだけは言わせてください。世界一、美しいウェディングブーケだと思っています。本当に綺麗な新婦でした。ご結婚おめでとう。
そしてもう一つのストーリー。この作品をとても気に入ってくださった方がいます。私のカラー(色彩)の先生。カラーリストになるため、色について2年間勉強していたのですが、ちょうどその間にアワードがありました。私がカサブランカを好きだと申し上げた時から、勉強に伺った際は必ずカサブランカを生けてくださったのです。生徒に対する思い遣りでもあり、先生もカサブランカをお好きだったのでしょう。受賞した際にはとても喜んでくださって。私は資格を取った2013年から今までに認定講師を5名しか育てていないのですが、その先生は、その後、認定講師になることを希望され、5名のうちの一人になられました。その後まもなく連絡が取れなくなり、私がまだまだお教えできることがたくさんある中・・・空の星となられました。
後で聞いたのですが、美しいままで覚えていて欲しいというご希望があったようです。私が何度連絡しても繋がらない。体調が優れないのは知っていたのですが、その連絡をいただいたのは先生の教え子の方からでした。私はたった5名しかいない育てた講師のうちの一人と二度と会えなくなってしまった。先生は私の作品を誰よりも好きだとおっしゃっていたし、私のストイックさが好きだと本当に愛してくださった。なのに私は年上を教える難しさに直面していて、自分の未熟さが浮き彫りとなる事象を経験していた。最後に送ったメール・・・もっと気が利かなかったのだろうか。私は愚かだ。
その先生のもとで育ったカラーの先生の中にも、グルーデコ講師になられた方がいらっしゃり、亡くなった先生の跡を継ぐべく、私がグルーデコの出張レッスンに伺った際には、サロンに従前通り、カサブランカが生けてありました。香りとともに先生を思い出す。私の絞りきった色使いは、先生のもとで習ったことが活きています。色を制することはデザインにとってとても大事。先生から教わったことは、私がしっかり受け継いでいる。
何と言うか・・・この作品を見るだけで、たくさんの思い出が湧き上がってくるのです。音楽を聴くと、思い出が湧き上がる。それとよく似ています。
今日は、一つ目の作品を振り返りました。モヤモヤしていた時期に、新たな風を吹かしたこと。結果は思うように出なかったけれど、周囲は努力の過程を見てくれている。一歩踏み出して、本当に良かった。「捨てるのが先、得るのは後。」これは私の哲学である。私がこの時期に捨てた事は、認定講師を輩出する事。実際5人目以降はご依頼をすべてお断りしている。良い先生はたくさんいるので、私でなくとも大丈夫。そして自宅サロンで教えることをやめ、カルチャーと出張レッスンの活動、アワードへの挑戦にシフトチェンジした。「人と同じ」は自分らしくない。私は自分の花を咲かせたい。強い想いは、次年度の作品へと繋がる。
Yumi